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浄化のなみだ


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 5月の歌舞伎座の公演は團菊祭です。今年は、尾上眞秀さん(寺島しのぶさんの息子さん、尾上菊五郎さんのお孫さん)のお披露目が午前の部に組まれています。

 

 市川猿之助さんの事件が起きる前に、歌舞伎座に行くことを決めていました。

 

 学業のスケジュールを考えると、時間の余裕はありませんでした。ですが、どうしても観たい演目がありました。

 

 どうしても観たかった演目、それは午後の部で上演される「達陀」です。

 

 「達陀」は2代目尾上松緑さん奈良の二月堂のお水取りを群舞にしたものです。お水取りでは、選ばれた11人の修行僧が、個人の雑念を祓い、世の中の平和安寧を祈ります。

 

 修行僧はお寺の中で体を打ちつける等の荒業をし、14日間、飲まず食わずで祈りを捧げます。空腹よりも、喉の渇きに耐える方が大変だといいます。

 

 舞台は、主人公の僧侶、重慶を中心に描かれます。重慶の煩悩の象徴として、昔恋仲にあった青衣の女人が重慶の頭の中で幻想として出てきます。

 

 若かりし日の重慶と青衣の女人が恋を楽しむ姿が静かな舞踊で回想されます。そして、青衣の女人は、自分の本当の名前を言わず、青衣の女人とよぶ重慶を自分の方に引き戻そうとします。

 

 重慶は心を揺さぶられながらも必死に青衣の女人を振り払い、修行を続けます。そして重慶を中心に僧侶の修行の姿が、40人位の群舞となり、クライマックスを迎えます。

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 この舞台をどうしても観てみたかった。圧巻でした。舞台がおわったときに、私は放心状態になっていました。午後の部は3幕あり、達陀は第2幕でした。あまりに感動し、余韻が大きく、第3幕の尾上菊之助の世話者を見ずに帰ろうかと思ったくらいでした。(帰らないで最後まで見ました)

 

 後半の修行僧の舞を見ているときにいろいろなことが頭に浮かんでは消えました。この時感じたことは、私の心の中のうちなる声だったように思います。群舞となり、いろいろな感情が湧き上がり、気がついたら、マスクの下で涙で頬が濡れていました。終演後も涙を拭うほどでした。涙の量は大変多かったのですが、上演中になかっしゃくりあげて泣かなかったことが不思議なくらいでした。

 

 本当に観てよかった。こころが動き、涙で浄化されるようでした。浄化の涙で感じた感動は、胸の中には今も熱い何かがあります。

 

 胸の中で思ったこと、感動したことは達陀が私にとって特別な作品ということもありますが、このタイミングでこの演目を観るチャンスをもらったこともご縁であり、気づきを得られたことをありがたく思います。


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